大学入学者選抜の変更における2年前予告を考える(前編)
3 適切な公表のレベル
次にどのレベルまで公表を行うかについて考えてみたい。大学入学者選抜実施要項では「個別学力検査及び大学入学共通テストにおいて課す教科・科目の変更等」と明記されている。新課程入試では大学入学共通テストの設定科目が大幅に変更されるため,実施要項で示す通り,具体的な教科・科目設定に関する予告は必須と言える。
また,各教科・科目の選択方法,さらに各教科・科目がどの程度選抜に影響するかを示す「配点」に至るまで予告は必要と考える。私の勤務校では毎年高等学校教員向けに入試説明会を開催しているが,配点の早期公表は生徒の学習指導・進路指導において欠かせない情報であるなどの声が多い。
そして,選抜の多様化の現状から,学校推薦型選抜ならば推薦要件,総合型選抜であるならば出願要件の予告も必要となる。実施要項では,入学者選抜の実施にあたり高等学校における適切な教育の実施を阻害することとならない配慮が毎年にわたって大学へ求められており,スムーズに高等学校教育が進められるよう変更時の公表は可能な限りの情報を公開しておくことが教育機関として欠かせないだろう。
4 後編に向けて
ここでは,新課程入試時の予告の時期と公表レベルについて検討した。一方,思うように志願者が集まらない,あるいは入学者の質の担保の問題などを理由として,新課程入試への移行時にとどまらず,通常の入試変更は頻繁に行われている。これらの変更についても2年程度前の予告・公表を行うことが原則となるが,大学側に様々な事情が存在し,必ずしもルール通りの運用が容易ではないケースもあることが実態だろう。
そこで,後編では平時の適切な予告のあり方について検討するとともに,入学志願者保護のために各大学が今後どのように取り組む必要があるか考えてみたい。
<著者プロフィール>:
植野 美彦(うえの よしひこ)
・徳島大学 高等教育研究センター 教授 (高等教育研究センターアドミッション部門長)
・専門分野:大学入学者選抜、高等教育
・現在、多面的総合的評価に繋がる入学者選抜と評価方法の構築、並びに入学試験における志願者動向の追跡などを中心に研究活動を行っている。その他、文部科学省先導的大学改革推進委託事業審査委員会委員をはじめ、社会活動においても積極的に取り組んでいる。