東工大 情報活用IR室のユニークな取り組み
東工大IRのユニークさ
――東京工業大独自の取り組みについてお聞かせください。
高松 我々のチームは、支援業務を主務とする教員で構成されています。専門的なデータ解析ができる職員がなかなかいない一方で、解析のできる教員は教育・研究が主務となるためIRにウエイトを置くことができないという現状があります。そのため大学運営を専門的な立場から支援する『マネジメント教授』と『マネジメント准教授』という役職が2022年から設けられました。IR業務が多岐にわたっているため、本学では教員4名体制で担当しています。
――教育IRの、学生調査に関する取り組みについて詳しくお聞かせください。
松本 本学の学生調査は、入学から卒業まで全体で9つ実施されています。学生調査の基礎理論として、入学前情報(Input)、学習環境(Environment)、学習成果(Output)というI-E-Oモデルに沿って整理を行いますが、本学では卒業生の調査をOutputから切り離し、新しくライフキャリア(Life Career)という項目を設け、I-E-O-Lの4つに分けて整理するという方法をとりました。このI-E-O-Lモデルは、現在Data Science and Institutional Research (DSIR)2023に投稿中です。新たに作成したマトリクスを元に学内で各部署に相談し、ひとつのつながったデータとすることを目指して取り組んでいるところです。
――業務改革では、どのような取り組みをおこなっていますか?
今井 IR室設立当初より、我々はデータの正確性を担保できないという課題に直面していました。教育に関するデータだけでも、学生アンケートや学務の書類、学籍情報や成績情報など、大量の学内データが各部署で作られています。この生み出される大量のデータを、いざIRでデータ分析をしようとなった際にデータが集められない(どこの部署で管理されているかわからない、必要な項目が存在していない)、活用できるようになっていない(意図が伝わらない、項目の意味がわからない)という事態が発生することが多いです。
IRを円滑におこなうためには、情報を収集する段階からIR室と各部署が連携していたほうが、その後の解析などはスムーズに進むことが多いと思います。本学ではこの状況を改善するためにBPM(Business Process Management)の考え方を導入しました。何かしらの書類が流れてきたときに、どのような手続きを踏んでデータが確定していくのか、また、どのようなデータを扱っているのか、だれが何をしているのかという業務プロセスを可視化、言語化することで、業務を改善し最適化を行ってきました。
――学内にIR室の取り組みを浸透させ、安心してデータを預けてもらうようにするために行っていることはありますか?
森 IR室は監査室と同じく独立した立場にあります。IR室から出るデータで資源配分などの議論がなされる可能性があるからです。また、IR室が提供したデータに不備がないかヒアリングし、問題があれば調査を行います。あくまでも公正中立の立場で教職員を守るということを観点として活動することが、学内のIR疲れを防ぐことにもつながると考えています。
インタビューと記事:阿部千尋(KEIアドバンス コンサルタント)