河合塾講師が語る!2025年度新課程入試 ―日本史編―[前編]

各大学の個別試験でみられた新課程への対応② -『日本史探究』-

それが、探究的な問題が驚くほどに見られなかったのです。科目名として『日本史探究』を名乗ってはいるものの、問題内容自体は、旧『日本史B』と変わらない大学がほとんどでした。

その点については、筑波大学で従来とは異なる傾向が見られました。筑波大学の問題は、指定語句を用いた論述問題を4問出題するのが通例です。400字×4問の計1,600字の論述が求められるため、解答には非常に体力を要します。

全体で1,600字の論述が課される点に変更はありませんでしたが、2025年度の入試では、大問Ⅱで2種類の資料が提示され、さらには参考として地図まで用いられていました(従来は論述テーマと指定語句が示されるのみ)。これほど手の込んだ問題が、筑波大学の日本史の入試問題で出題されたのは初めてではないでしょうか。また、同様に大問Ⅳでも史料が用いられていたことに鑑みても、「探究」が意識されていることは明らかです。この変化に受験生は相当驚いたと思います。書かねばならない字数は変わらずボリューミーであるのに、そこに過去問で見たことのない形式の問題が出題されたわけですからね。


京都大学が初めて問題に表やグラフを用いたことも、2025年度入試のトピックスとして挙げられます(大問ⅢのCにて使用)。これも「探究」を意識してのことでしょう。

河合塾|大学入試解答速報|京都大学 前期
京都大学|令和7年度 試験問題および出題意図等


あるいは、リード文で「授業で調べ学習を行った」などの文言を入れて、探究学習の場面設定をしている大学はそこそこ見られました。新課程に対する各大学の努力を感じます。

名古屋大学の問題Ⅰです。漫画のセリフも一要素とする解答の作成を求めた点に、知識だけでなく、思考力・判断力・表現力まですべて問おうという意図を感じました。衝撃を受けたという意味でも、1位はこの問題かなと思います。


中垣 秀作(なかがき・しゅうさく)先生

プロフィール:
河合塾日本史科講師。中部地区所属。授業は、講義・演習・ゼミなど幅広く担当。教材作成、入試分析等にも携わる。
早稲田大学第二文学部東洋文化専修卒業。学生時代の専攻は、歴史教育学。

著書:
『マーク式基礎問題集 歴史総合』(共著)[2025年 刊行予定]


インタビュー・執筆・編集:山口夏奈(KEI大学経営総合研究所 研究員)
インタビューアシスタント:原田広幸(KEI大学経営総合研究所 主任研究員)

関連記事一覧