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【Ⅲ.学生の変化】Part.2「学生からの相談内容」-全国国公私立大学学長アンケート2024-2025 詳細分析-

相談件数の増減と、メンタルヘルスに問題を抱える学生・休退学者の増減の関係について②

また、設問Ⅲ-4および5で示した各相談項目について、「相談が増えた」と回答した大学を基準としたクロス集計も行っている。例えば、「学業・研究」に関する相談が増えた大学(N=123)のうち、メンタルヘルスに問題を抱える学生が増加した大学は109校(88.6%)、休学者が増加した大学は73校(59.3%)、中途退学者が増加した大学は36校(29.3%)である。つまり、「学業・研究」に関する相談の増加は、メンタルヘルスに問題を抱える学生の増加や休学者の増加に関係している可能性が考えられる。

図42 Ⅲ-1とⅢ-5のクロス集計(各相談が「増えた」大学について)

このようにすべての項目を確認していくと、いずれの相談項目においても、「相談が増えた」と回答した大学では、メンタルヘルスに問題を抱える学生が増えていることが分かる(ほとんどの項目で80%以上の大学が、「メンタルヘルスに問題を抱える学生が増えた」と回答している)。中でも「部活動・サークル、アルバイト先での対人関係」との相関が強く、本項目の相談件数が増加した大学の約92%で、メンタルヘルスに問題を抱える学生が増えているようである。メンタルヘルスの悪化には人間関係が大きく関与しているということだろう。なお、後述の設問Ⅲ-6では、ここに示した以外の相談内容を自由記述式で問うているが、学内のあらゆる対人関係に関する相談があるとの意見が寄せられている。

また、「学業研究」「転部・転科」といった学業関連の相談が増えた大学では、休学者の増加傾向がやや強い。専攻分野とのミスマッチ等が起因している可能性も考えられる。

相談件数の増加と中途退学者の増加との相関は、高いものでも35%程度である(「部活動・サークル、アルバイト先での対人関係」35.9%、「転部・転科」34.4%)。このほか、「不眠、朝起きられない」「モチベーションがあがらない、目標が持てない」の相談が増えた大学のうち、32%の大学で中途退学者が増加しているようだ。専攻分野とのミスマッチや、学業あるいは大学に行くこと自体へのモチベーションの低下などが、一部学生の不本意な退学に影響しているのかもしれない。

なお、「部活動・サークル、アルバイト先での対人関係」の相談の増加は、メンタルヘルス問題を抱える学生、休学者、中途退学者の増加といずれも比較的相関が高かった。


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