
【Ⅲ.学生の変化】Part.1「学生のメンタルヘルスと休退学」-全国国公私立大学学長アンケート2024-2025 詳細分析-
■ 設問Ⅲ-2 休学者の増減について
設問Ⅲ-2では、2019年以前と現在を比較し、「休学者の増減」を問うた。
全回答数345校中155校の大学(44.9%)が、コロナ禍以前と比較して「休学者が増えた」と回答。ただし、この値は「休学者数に大きな変化はない」と回答した大学数とほぼ同値である(149校,43.2%)。また、「休学者が減少した」という大学も36校見られた(10.4%)。
なお、「休学者が増えた」と回答した大学の設置区分の内訳は図11の通りである。Ⅲ-1に比較して国公立大学の占める割合が減少し、私立大学の占める割合が増加する。これは【設置区分】別の集計からも読み取れる。

図10 休学者の増減について(全体)

図11 休学者が「増えた」と回答した大学の内訳(設置区分)
【設置区分】
全体・国立大学・公立大学では、休学者数の増減について、「減少<増加<変化なし」の順で占める割合が高くなるのに対し、私立大学のみ「減少<変化なし<増加」の順となっている。なお朱字は、各回答の設置区分に占める割合が全体値を上回ったものを示す。

図12 設問Ⅲ-2(設置区分別)
【本部所在地】
エリアごとに異なる傾向が見られた。およそ全体版と同様の傾向を呈すのは、北関東、埼千神、東海である。
「休学者が増えた」大学の割合が、休学者数に「変化なし」または「減少した」と回答した大学の割合よりも10pt以上高いエリアは、近畿(57.9%)、東京(54.7%)、北海道(47.8%)、東北(45.8%)であった。近畿や東京では回答数に占める私立大学の割合が70%前後と比較的高めであるが、北海道は65%、東北は58%のため、エリアごとの集計に設置区分の別が影響していると一概には言えない。また、九州のようにエリアの回答数に占める私立大学の割合が約67%でありながら、休学者の増加が36.4%にとどまっている地域もある。
なお、東北はエリア全体としては休学者がやや増加傾向にあるが、一方で「休学者が減少した」大学の割合も20.8%と、全エリア中最も減少率が高くなっている。ちなみに、甲信越、北陸、中国、四国、九州のいわゆる地方エリアでは「休学者数に変化なし」と回答した大学が多かった。

図13 設問Ⅲ-2(本部所在地別)
【収容定員】
小規模大学では休学者の増加した大学が比較的少ないようである。また収容定員が3,000人以上になると、特に公立・私立大学で、「休学者が増えた」と回答した大学数が、「変わらない」「減った」と回答した大学数よりも多くなる傾向が見られた。

図14 設問Ⅲ-2(収容定員別)
以上より、休学者の増減については、設置区分、本部所在地、収容定員ごとに、全体版とやや異なる傾向を示すものも複数見られた。
さらに、「休学者が増加した」と回答した大学155校について、設置区分を基準にクロス集計を行った結果を図15にまとめている。なお朱字は、本部所在地別、収容定員別の集計において、全体値よりも高い割合を呈したものを示す。

図15 設問Ⅲ-2で「増えた」と回答した大学(区分のクロス集計)
設置区分と本部所在地とのクロス集計では、エリアごとに異なる傾向が見られた。例えば東北を見ると、公立大学において休学者が増えた大学の割合は14.3%であるのに対し、私立大学では57.1%、国立大学では66.7%の大学で休学者が増加している。
反対に北関東では、公立大学で休学者の増加が顕著であり(80.0%)、国立大学・私立大学で休学者の増加した大学は22~25%程度にとどまっている。また、北陸では私立大学で休学者の増加傾向が強く見られ(75.0%)、それに国立大学が続き(33.3%)、公立大学は休学者が増加した大学の割合は0%であった。
甲信越や近畿では、設置区分に関わらず、休学者の増加した大学の割合はほぼ一定である。例えば近畿では、国公私すべての設置区分で、休学者が増えた大学の割合は50~60%であった。つまり、近畿エリア全体として、休学者の増えた大学は半数程度あることが分かる。
設置区分と収容定員とのクロス集計では、3,000人以上の学生を収容する公立・私立大学で、休学者の増えた大学が多い傾向にある(ただし、公立大学はサンプル数に乏しい)。なお、国立大学はその規模に関わらず、休学者の増えた大学の割合が30%弱のところが多かった。