2027年開校「ドルトンX学園」が提示する日本初教育モデルの全貌

【REPORT】非認知能力の伸長をどう可視化し、学力へ繋げるか 「ドルトンX学園」提示する教育モデル

日本の教育改革が直面する課題に対し、河合塾グループは一つの解を提示する。それが、2027年4月に岩手県一関市で開校予定の「ドルトンX学園高等学校」だ。これは単なる新設校の誕生ではない。これからの社会が求める人材を育成するための、大胆かつ緻密に設計された教育ソリューションである。

2019年の開校以来、探究学習を軸に確かな成果を上げてきたドルトン東京学園。その成功した姉妹校として、なぜ河合塾グループは今、「地域拠点滞在×通信制」という日本初の教育モデルを世に問うのか。

1.なぜ新たな学校が必要なのか:非認知能力育成への挑戦

現代社会は、情報化とグローバル化の波の中で急速に変化し、求められる人材像もまた、従来の学力偏重の枠組みでは捉えきれなくなりつつある。リーダーシップ、協働性、自己効力感といった、従来型の学力テストでは測れない「非認知能力」の育成が、今なぜ喫緊の課題となっているのか。

その問いに対する河合塾グループの回答は明確である。同グループが将来的なビジョンで掲げる一つのテーマが「価値共創人材の育成」だ。ドルトンX学園の設立は、まさにこのビジョンを具現化する一手である。そのためには、非認知能力の養成が不可欠だ。

ドルトン東京学園とドルトンX学園の準備室を兼務する古屋照氏は、非認知能力の育成が短絡的な手法では不可能であると指摘する。

「この講座を受けたから偏差値が1上がるといったような簡単なものではない。非常に時間のかかる複雑な過程を経て非認知能力というのは上がっていく」――この洞察から、数年間という時間をかけて生徒の成長と向き合う「学校」という環境こそが、非認知能力を育むための最適解であるという結論が導き出された。その確信の裏付けとなっているのが、先行する中高一貫校の「ドルトン東京学園」が6年間で積み上げた揺るぎない実績である。

そのデータを紹介しよう。

非認知能力の伸長

創立一期生のデータによれば、入学時に全国平均レベルだった非認知能力が、高校3年次には平均を大きく上回るレベルまで成長。特筆すべきは、相手を深く尊重する「共感・傾聴力」が触媒(トリガー)となり、「地球市民性」や「失敗から学ぶ力」といった他の重要な能力の成長を牽引したという分析結果だ。これは、対人スキルの育成が単なる結果ではなく、成長サイクルの起点となる優先事項であることを示している。

成長を生み出すサイクル

この成長の要因は、生徒の「主体性」を起点とする独自の学習サイクルにある。生徒自らが探究テーマを設定し挑戦する。しかし、実践の中で必ず壁に直面する。その壁を乗り越えるために「どうすればいいのか」と考えることが次の探究へと繋がり、結果として知的好奇心や学力そのものを向上させる。これは、教師から与えられた課題を受動的にこなす従来の学習モデルとは一線を画す、能動的な成長メカニズムである。

成功のカギ

この分析から導き出された示唆は明確である。教室を飛び出し、五感を使って本質に向き合う「探究」と、失敗を恐れずに実践を繰り返す「挑戦」の経験こそが、非認知能力を育む上で不可欠な要素であるということだ。

このように、ドルトン東京学園が固定されたキャンパス内での「探究」の有効性を証明したとすれば、「ドルトンX学園」の使命はそのモデルをさらに加速させることにある。学びの場を学校内に留めず、社会と世界全体へと拡張することで、生徒が向き合う「挑戦」の密度と多様性が大きく高まる。これは、これからの時代を生き抜く人材を育成するための、必然的な進化といえる。

(次のページに続く)

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