「公営塾」研究プロジェクト

Q:「公営塾」が広まっていった背景には、どういった事情があるのでしょうか?

事前調査では、公営塾のおよそ9割は、人口2万人以下の自治体に設置されていることが分かりました。地方の人口は減少傾向ですから、日本全体の人口減少と関わっていることは推測できます。

ただ、確実な認識として言えるのはここまでで、全国調査では、まだ人口規模との関連について、検証と精査を進めているところです。

公営塾を設立する動機は、自治体によって、また、塾が小中学生向けか、高校生向けかによって、異なります。

事前調査では、公営塾のWebサイトを見たり、直接担当者に聞いてみたりしたのですが、公営塾の多くが、設立の理由として、その地域の教育機会の不足や欠如を挙げています。あるいは、民間塾がないことを挙げている自治体もあります。

小中学生を対象とする公営塾には、高校受験を目的とすることを明記している塾や、学習の習慣化やモチベーションの維持を目的とする塾もあります。また、都会と地方の学力差の解消を目的としている塾もあります。さらに、英語学習のみを行う塾もあります。

高校生を対象とした公営塾の場合、地元にある高校を残したい、つぶしたくないという理由もあるようです。高等学校を管轄するのは都道府県であることがほとんどですが、人口減少に対応して高校の統廃合と効率化を進める県庁に対して、自治体としては高校を残したいと考える場合もあるわけです。高校への入学者を増やすために重要なひとつの手立ては、進学実績を上げることです。

そこで公営塾を設置し、生徒の成績を上げ、大学進学につなげることが目指されます。自治体にある高校の大学進学率を高めることで、地元の中学生が都市部へ流出せず、地元の高校へ進学してくれることを期待しているのですね。高校にとっても、公営塾ができることで、自校の生徒を大学に進学させることができ、地元の中学生に自校を志望させやすくなります。

ただ、実はそれだけではなさそうです。高校生対象の公営塾の中には、地元への愛着を育んでほしいという願いで運営されているものもあります。そのため、教科学習の支援だけでなく、地域について学ぶプログラムや、キャリア教育を実施している公営塾もあります。

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