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  • 国際紛争、大規模災害、少子高齢化など、厳しい状況の中で新しい道を拓くための人材育成・社会貢献に資する大学への期待は大きい。真摯に改革に取り組む大学トップの声を紹介する。

名古屋外国語大学 亀山郁夫学長インタビュー[後編]

これからの大学教育 

 亀山:どの大学もそうかもしれませんが、本学でも、大改革を進めています。法人と大学執行部による協議機関「将来戦略会議」という組織でやっています。コロナで、外国語・国際系の学部人気が低迷しているが、そのなかでどのように生き残るか。膨大な時間をかけて、議論を尽くして、ようやく昨日、大枠が固まったところです。詳しくは話せないんですが、これから、評議会、理事会の承認を待つことになります。

 亀山:大学改革のビジョンなどというものは、すでに出尽くしているんです。起業精神のある学生を育てるとか、AIとデータサイエンスに強い人材育成とか。「世界人材」や「世界教養」もそう。だから、いま議論すべきは、方向性というよりも、具体的な戦術ですね。

 亀山:教養力の向上という課題への対応は、実質化してきています。本学には「世界教養学科」がありますが、そこでの「アカデミック・アドバイザー」という仕組み がうまく機能しはじめています。あたかもブドウの房のごとく有機的に組み合わさったカリキュラムの中から、個々人の興味に合わせて、合理的に履修科目を選んでいける仕組みです。そこで学んだ学生が育ち、社会に出始めている。このシステムを、他学科にも広げていきたい。

 亀山:私もゼミを持っていますよ。教養力の向上のための授業を展開しています。たとえば、英詩(英訳詩)を読ませる。とにかく、詳細に読む。わからない表現は、DeepLにかけたりしながら、淀みなく音読できるまで読み込む。詩は声に出すのが重要です。

テクストは、私が今執筆中の運命論で、各学生に音読してもらいます。フロイトやエディプス・コンプレックスというキーワードが出てきたら、その場でネットで調べさせる。20世紀の知的課題について、中村雄二郎の名著『述語集』(岩波新書)の中から、エッセイを選び読ませて、調べたり、ディスカッションしたりもします。最後は400字のエッセイ・ライティングです。授業時間中にテクストを共有し、相互に意見を述べあうのです。

学術と芸術がつながっていることを学ぶのも重要です。シェークスピアに関連して、プロコフィエフを聞かせたり、ショスタコーヴィチの交響曲を聞かせてから、独ソ戦について調べさせ、ウクライナ問題につなげたりもする。

このように、知が有機的につながっていることを確認していくような授業をやっています。これは、オンライン授業での学が効を奏したよい例です。


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