KEI BOOK CLUB

高等教育関連の新刊書を中心に、さまざまなジャンルの書籍を紹介するコーナー

『組織文化とリーダーシップ【原著第5版】』E.H.シャイン・P.シャイン 著/宇田理 監修・監訳/藤原七重・山本崇雄 監訳(白桃書房刊)

文化創造とマネジメントのプロセスを読み解くシャイン博士の「組織文化論」集大成

■本の内容

エドガー・H・シャインは、組織心理学という分野を開拓し、経営学の世界に大きなインパクトを与えた。その業績は大きく3つに分類できる。キャリア論(『キャリア・アンカー』[小社刊]など)、援助論(『プロセス・コンサルテーション』[小社刊]、『人を助けるとはどういうことか』[英治出版刊]など)、そして、本書『組織文化とリーダーシップ』に代表される組織文化論である。

本書では、世界有数の企業のコンサルタントとしての経験を通じて培われた知見から、組織における「文化」と「リーダーシップ」のダイナミズムをあますところなく描いており、数多のケースから文化創造とマネジメントのプロセスが読み解かれる。

本書は大きく4部構成になっている。文化分析の基礎となる「文化の構造」を捉える視点の学びを皮切りに、昨今その重要度を増している「マクロカルチャー」が組織に与える様々な影響に目配りしながら、組織の成長段階ごとの状況やリーダーの影響も考慮して「文化の進化」がもたらすダイナミズムの本質を理解し、「文化の変革の実践」へと進んでいく流れである。

今回訳出された第5版では、息子であるピーター・シャインにも執筆協力を仰ぎ、近年著しいグローバル化や DX 化に伴う組織の変化、ミレニアル世代以降特有の価値観などを踏まえた議論が展開されている。同時に、昨今流行している文化の定量的/定性的な測定・評価ツールの検討もあり、時代に即した改訂となっている。また、これまでの理論がすっきりとまとめられ、各章に読者へのアドバイス・問いかけが加わったことで、より理解しやすい構成となっている。さらに、全編にわたってマクロカルチャーや文化とリーダーシップの関係性に関する洞察がなされ、自身の内なる文化を知る重要性も示されている。

2023年に逝去されたシャイン教授が生涯をかけて追究してきた組織文化研究の集大成であり、「文化」理解の指針となる不朽の名著である。


■著者
E.H.シャイン(Edgar Henry Schein):

マサチューセッツ工科大学スローン経営大学院名誉教授。
1972年から1982年までの間、組織研究グループの学科長を務める。産業心理、組織心理に関するアメリカ心理療法士協会の資格をもち、アメリカ心理学会の会員。NTL協会においてグループトレーナーを務め、アメリカやヨーロッパ諸国において組織文化、組織開発、プロセス・コンサルテーション、キャリア・ダイナミックスについてコンサルティングをおこなう。
クライアントにはチバ・ガイギー、シェル・インターナショナル、P&G(プロクター・アンド・ギャンブル)、ゼネラル・フーヅ、IBM、アップル、ポラロイドなど国際的に有名な企業が数多く含まれる。
ゴードン・ハーウィック賞、社会科学研究会議の研究員、組織開発への貢献により、ASTD賞を受賞。
2023年1月26日逝去。

■監修・監訳
宇田 理(うだ おさむ):
青山学院大学経営学部経営学科教授。商学修士(早稲田大学)。専門分野は経営史、経営学、キーワード(情報通信産業史、コンピューティング史、企業家のライフヒストリー)。2003年日本大学商学部専任講師に就任。2006年同准教授。2014年より神戸大学経済経営研究所リサーチ・フェロー。2017年日本大学商学部教授を経て、2019年より青山学院大学経営学部経営学科教授。

■監訳:
藤原 七重(ふじわら ななえ)
千葉商科大学商経学部・商学研究科修士課程教授。商学修士(早稲田大学)。研究分野は経営学。2000年早稲田大学商学部助手。2002年敬愛大学経済学部専任講師。2005年同助教授。2007年同准教授。2009年千葉商科大学商経学部准教授に就任。2012年より同教授。2013年より千葉商科大学商学研究科教授。2018年から2020年まで同経営学科長を務める。

山本 崇雄(やまもと たかお)
神奈川大学経済学部経済学科/現代ビジネス学科・神奈川大学大学院経済学研究科経済学専攻(国際経済コース)教授。専門分野は国際経営論、多国籍企業論、キーワード(組織論の観点からの海外子会社マネジメント、海外における新規ビジネス創造、埋め込み、知識フロー)。著書に『グローバル成長と発展への経営 日本企業の再生と挑戦』(共著、2022年)。『ケーススタディ グローバルHRM 日本企業の挑戦』(共著、2019年)。『理論とケースで学ぶ国際ビジネス(第4版)』(江夏健一・桑名義晴編著)(共著、2018年)。


【目次】

第1部 文化構造を定義する
第1章 文化の一般的な定義
第2章 文化の構造
第3章 創業間もない成長著しい米国エンジニアリング企業
第4章 成熟したスイスドイツ語圏の化学メーカー
第5章 シンガポールの開発政府機関

第2部 リーダーがマクロカルチャーについて知っておくべきこと
第6章 マクロカルチャーが生じる文脈の次元
第7章 マクロカルチャーに焦点を当てた取り組み

第3部 成長段階における文化とリーダーシップ
第8章 文化の誕生と創業者の役割
第9章 どのようにして外部適応と内部統合は文化となるのか
第10章 リーダーはどのようにして文化を定着させ、伝えるのか
第11章 組織の成長、成熟、衰退に関わる文化のダイナミクス
第12章 文化の自然進化と誘導された進化

第4部 文化を評価し、計画的変革を導く
第13章 文化を解読する
第14章 診断型定量的アプローチによる文化の評価と組織変革プログラム
第15章 対話型定性的アプローチによる文化の評価プロセス
第16章 変革マネジメントのモデルと変革リーダー
第17章 学習者としての変革リーダー


定価 4,500円(税込)
刊行日 2025年3月31日

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