KEI BOOK CLUB

高等教育関連の新刊書を中心に、さまざまなジャンルの書籍を紹介するコーナー

『平成時代における高校生の進路選択 トラッキングの“弛緩”に関する実証的研究』中西啓喜 著(ミネルヴァ書房刊)

トラッキングの“弛緩”をキーワードに、大学進学の大衆化が高校生の学習や進路指導に及ぼした影響を分析する

■本の内容

少子化社会は大学進学率を上昇させた。大学進学の大衆化は、高校生の学習や進路指導にどのような影響を及ぼしたのだろうか。 本書ではトラッキングの“弛緩”をキーワードとして分析を展開する。

[ここがポイント]
◎ 30年にわたる調査データから見えたトラッキングの“弛緩”
◎ 大学進学の大衆化が高校生の学習や進路指導に与えた影響


■著者:
中西啓喜(なかにし ひろき)
1983年三重県生まれ。2013年青山学院大学大学院教育人間科学研究科博士後期課程修了。博士(教育学)。現在:桃山学院大学社会学部准教授。著書:『学力格差拡大の社会学的研究――小中学生への追跡的学力調査結果が示すもの』(東信堂、2017年)。論文:「学級規模を通じた衡平性と適切性の実証的検討――全国学力・学習状況調査における小学6年児童・学校・都道府県のマルチレベルデータから」『教育社会学研究』第110集(2022年)など。


目次

まえがき

序 章 進学準備化する高校
 1 高校卒業者の進路の趨勢
 2 トラッキングと教育期待
 3 高校内部では何が起こっているのか?
 4 本書の分析課題
 5 本書の構成

 第Ⅰ部 本書の理論的位置づけ

第1章 教育的不平等生成の理論的整理
 1 教育的不平等生成の理論
 2 トラッキング理論
 3 日本の教育的不平等の生成メカニズムの仮説検証

 第Ⅱ部 パネルデータ分析

第2章 青少年はいつ・どのように大学進学を希望するのか?──小・中・高校生パネルデータの分析から
 1 教育調査におけるパネルデータの意味
 2 アスピレーションの加熱/冷却の経験的分析
 3 パネルデータを用いた希望進路の分析
 4 四年制大学志望についての記述的分析
 5 パネルデータを用いた四大志望の分析
 6 成績の影響は高校入学前に限定的

第3章 トラッキングが高校生の教育期待に及ぼす影響──パネルデータを用いた傾向スコア・マッチングによる検証
 1 高校で希望進路は変わるのか
 2 先行研究のレヴュー
 3 調査方法とデータの概要
 4 分 析
 5 トラッキング効果の因果推論

 第Ⅲ部 高校のスループット分析

第4章 高校教育における選抜機関から支援機関へのシフト仮説の検証──繰り返し調査データを用いた分析
 1 トラッキングシステムの変容
 2 生徒文化と進路研究
 3 データと方法
 4 分析から見える高校の変容
 5 選抜機関から支援機関へ

第5章 少子化に伴うトップ高校の変化
 1 高校教育改革のエリートセクターへのインパクト
 2 エリート選抜のあらまし
 3 調査の概要
 4 方法と手続き
 5 トップ校入学者層の変化
 6 学習へのコミットメントの変化
 7 1990年代の教育改革の帰結

第Ⅲ部 補論国立大学は推薦・AO入試によって「成績優秀な学生」を獲得できているのか?
 1 エリートセクターにおけるマス選抜
 2 高校成績・入試選抜・大学成績に関する先行研究
 3 データ・方法・仮説の設定
 4 入試形態と成績の関係
 5 マス選抜の実状

 第Ⅳ部 国際比較分析

第6章 職業トラックによる教育アスピレーション冷却──PISA2015による国際比較分析から
 1 中等職業教育の趨勢
 2 先行研究のレヴューと分析課題
 3 データと変数
 4 職業トラックの効果
 5 日本におけるアスピレーションの冷却

 第Ⅴ部 職業トラックの分析

第7章 職業系専門高校の変遷と現状──商業科を中心に
 1 職業系専門高校の現状
 2 職業系専門高校──普通科,商業科,工業科の比較から
 3 データの概要
 4 商業科からの進学
 5 小学科による進路分化機能

第8章 農業高校は農業者育成機関としての役割を終えたのか?
 1 変わる農業高校
 2 農業・農村の近代史と農業教育
 3 農業高校の現状
 4 農業高校におけるインタビュー調査
 5 農業高校の未来

終 章 調査データから見えたトラッキングの“弛緩”
 1 日本の教育的不平等生成とトラッキング
 2 トラッキング研究への貢献
 3 進学準備教育化と支援機関としての高校
 4 今後の課題

あとがき
初出一覧
引用・参考文献
人名索引/事項索引


定価 4,960円(税込)
刊行日 2025年6月30日

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