KEI BOOK CLUB

高等教育関連の新刊書を中心に、さまざまなジャンルの書籍を紹介するコーナー

『文系大学生は専門分野で何を学ぶのか 専門分野別習得度から考える』 編著:本田由紀(ナカニシヤ出版刊)

大学時代に身につけた専門分野の知識は仕事とどう関連するのか

■ 本の内容

大学教育の質が問われるなか、日本学術会議による「分野別質保証のための参照基準」を参照したきめ細やかなパネル調査と分析を通して、学生時に習得した知識が仕事や卒業後にどう関連しているのかを中心に、学生たちの大学での学びとその後を鮮やかに考察する。


■ 編著者 本田由紀(ほんだ ゆき)

1987年、東京大学教育学部教育学科教育社会学コース卒業。1989年、東京大学大学院教育学研究科修士課程修了。1994年、教育学研究科博士課程単位取得退学。2004年、学位論文「教育システムと職業システムとの関係における日本的特徴に関する研究 : トランジションとレリバンスの比較歴史社会学」により博士(教育学)。1994年、日本労働研究機構研究員。2001年、東京大学社会科学研究所助教授。2003年から2006年まで東京大学大学院情報学環助教授を併任。2007年、東京大学教育学研究科准教授、2008年、同教授。その後、東京大学教育学部附属中等教育学校校長も務め、学校教育、とりわけ専門高校(旧称:職業高校)と労働や就業の問題への検討を行っている。


■ 目次

序 章 大学教育での「学び」をいかに把握するか
分野別参照基準に依拠した分野別の習得度項目を使用した調査の概要 本田 由紀・香川 めい
1 大学教育での「学び」をいかに把握するか
2 「習得度」項目の作成
 2-1 分野別参照基準における「知識・スキル」の記述のされ方と位置づけ/ 2-2 質問項目の作成プロセス
3 調査の概要
4 本書の構成

第Ⅰ部 専門分野別習得度を軸とした分析

第1章 「習得度」からみる専門教育の学習成果
10分野の習得度項目の回答結果 本田 由紀
1 本章の目的:個々の専門分野で学生は何をどれほど学んでいるか
2 10分野の習得度項目の回答結果
 2-1 言語・文学/2-2 哲 学/2-3 歴史学/2-4 法 学/2-5 政治学/2-6 経済学/2-7 経営学/2-8 社会学/2-9 社会福祉学/2-10 心理学
3 習得度項目の回答結果が示唆する専攻分野別の教育課題

第2章 専門分野別習得度と関連する大学教育とは何か
何を考え、どのように学んだかという学習経験の重要性 小山 治
1 問題設定
2 先行研究の検討
3 変数の設定
4 分 析
 4-1 学部の偏差値・大学の成績と専門分野別習得度との相関関係/4-2 専門分野別習得度の規定要因
5 結 論

第3章 専門分野の習得度は卒業後にどう影響しているか
職業スキルおよび社会意識への影響を検討する 本田 由紀
1 問題関心と仮説
2 変数・データ・分析方法
3 分析結果
 3-1 仮説Aに関する分析/3-2 仮説Bに関する分析
4 結論と考察

第4章 専門分野習得度と大学教育の有効性認識
パネルデータを用いた「学び習慣仮説」の再検討 椿本 弥生
1 問題と目的
2 分析1:分野ごとの「習得度」と大学教育の有効性との相関[Wave1 ~4 の推移]
 2-1 使用した変数、対象者、分析方法/2-2 分析1の結果と考察
3 分析2:専門分野習得度と大学での学びの仕事への活用度の順序ロジスティック回帰
 3-1 使用した変数、対象者、分析方法/3-2 結果と考察
4 専門分野別の回帰モデルの検討
5 まとめと今後の課題

第5章 聞き取り調査の結果から見る人文社会系大学教育の職業的レリバンス
学問分野別の知識習得度項目に着目して 二宮 祐
1 はじめに
 1-1 本章の目的/1-2 大学から職業への移行に関する近年の先行研究/
1-3 調査の概要/1-4 解釈の観点
2 仕事に関連すると認識される知識
 2-1 「関連がある」とされる仕事/2-2 言語・文学/2-3 歴史学/2-4 政治学/
2-5 経済学/2-6 社会学/2-7 心理学
3 考察と課題

第Ⅱ部 大学教育の諸側面

第6章 入試方法は大学での学びや成果とどう関連しているのか
「年内入試」利用者と「一般入試」利用者の違いに注目して 香川 めい
1 拡大する「年内入試」:一般入試とどう異なるのか?
2 データと変数
3 分析結果:入試方法によるさまざまな違い
 3-1 入試方法と大学受験経験/3-2 入試方法と大学での学び方/
3-3 入試方法と能力評価
4 まとめ

第7章 大学時代のレポート学習行動は職場における経験学習を促進し続けるのか
卒業後2年目までの追跡 小山 治
1 問題設定
2 先行研究の検討
3 変数の設定
4 分 析
 4-1 全体像の確認/4-2 職場における経験学習の規定要因
5 結 論

第8章 大学の地域教育は出身大学所在地と居住地の一致の有無と関連するのか
COC+に着目した卒業後2年目までの追跡 小山 治
1 問題設定
2 先行研究の検討
3 分析方法
 3-1 分析対象/3-2 分析手法と変数の設定
4 分 析
 4-1 出身大学の比較/4-2 COC+関連大学内での比較/ 
4-3 考 察
5 結 論

第9章 職業資格の取得の規定要因は何か
大学入学偏差に着目して 河野 志穂
1 はじめに
2 先行研究の検討と課題設定
3 どのような資格が取得されているのか
4 誰が資格を取得するのか
 4-1 使用する変数と基礎統計量/4-2 分析の結果と考察
5 おわりに

第10章 人文・社会系大学生の学習経験と進学行動
学部時代の経験に着目した大学院進学要因分析  久保 京子
1 問題設定
2 先行研究の検討と課題の設定
3 学部時代の経験・獲得された能力が進学行動に与える影響
 3-1 使用するデータ/3-2 使用する変数/3-3 分 析
4 人文社会系学生の進学決定時期と進学理由
 4-1 使用するデータ/4-2 インタビュー結果
5 まとめ

第11章 大学教育の質の把握に関する理論的検討
学生の習得度から何が見えるか 松下 佳代
1 本章の問題と目的
 1-1 大学教育の質とは何か/1-2 大学教育の質をどう把握するか/1-3 本章の目的
2 学生を通した大学教育の質の評価のタイプ
 2-1 タイプ分け/2-2 タイプごとの事例
3 習得度による大学教育の質の把握
 3-1 本研究の位置づけ/3-2 大学教育の質はどう把握されたか
4 おわりに

事項索引
人名索引


定価 2,970円(税込)
刊行日 2025年3月31日

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