河合塾講師が語る!2025年度新課程入試 ―世界史編―[前編]

共通テストにおいて重要なのは「時代感覚」を正しく持つこと

共通テストでは、おそらくそうした力が求められているように私も感じています。正式に科目名が『歴史総合,世界史探究』に変更されたのは2025年度入試からであるものの、資料を多用したり、会話文が提示されたりといった出題形式は、新学習指導要領が公表された頃からすでに見られ始めていました。

出題傾向についても、同時期から変化が見られています。その近年の出題傾向こそ、おっしゃったような「細かい用語は聞かない」というものです。具体的には、用語ではなく、時期や内容で正誤を判定させる問題の増加を意味します。

例えば、「前漢の董仲舒が儒学の官学化を後押しした」という文を基とする正誤判定問題を作るとき、センター試験時代には、「董仲舒」を「孔穎達」など別の人物に入れ替え、その正誤を判定させるタイプの問題が多くありました。一方、共通テストでは、正誤判定問題で並んでいる文は基本的にすべて正文です。そこに内容的な誤りはありません。共通テストにおける正誤判定のポイントは、「その問いに合致するのはどの文か」なのです。ここに、センター試験と共通テストの大きな違いがあります。

「その問いに合致するのはどの文か」というのは、「問題に示されている時期の出来事として適当なのはどの文か」、あるいは「問題に示されている事象の説明として適当なのはどの文か」を意味します。正文の中から「問いに合致するもの」を選ぶ正誤判定問題、共通テストではこのタイプの出題が非常に増えているのです。

そのため、「何世紀といえばこのような時代だ」とか、「ファシズムの時代には、社会的にこのような特徴があって、人々はどのようなメンタリティを持っていて…」といったような「時代感覚」を正しく持つことが、より強く求められるようになりました。

しかし、このことを「時期を問う問題が増えたから、やはり世界史は暗記だ!」と捉えられてしまうと本末転倒です。共通テストの趣旨からも離れてしまいます。その意味でも、あくまで出題側が問うているのは「時代感覚」なのだと私は認識しています。


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