名古屋外国語大学 亀山郁夫学長インタビュー[後編]
Q:亀山先生ご自身は、いま何か新しいことに取り組まれているんでしょうか。
亀山:私は、ずっとこの考え方でやってきて、10個くらいの軸が出来上がりました。もちろん、中心にはロシア文学がありますが、その他にも小さな専門性をたくさんもっている。ロシア美術、アバンギャルド。チェロとクラシック音楽。自室には3,000枚を超えるクラシックのCDコレクションがあり、重要なものは徹底的に聞きこんでいる。村上春樹は、台湾で学会があって呼ばれたため、ある時から読み込んで、プチ専門家を自負している。
最近は、作家の宮部みゆきさんとの会談があるので、一気に長編を3編読み切りました。小説は、AmazonのAudibleも利用して「読み」ます。宮部作品は、聴き終わるまでに75時間もかかる。「先生、よくそんなに時間がありますね」と聞かれますが、隙間時間やデバイスをうまく使いこなせば、いろいろできるものです。
宮部みゆきを読んだことで、松本清張のファンの人たちとも交流ができました。両作家のファン層はだいぶ重なっており、知っていることを共有することで、世界も広がる。we-dentityを広げるのはこのような小さなステップからでよいのです。小さな領域でも、徹底してやる。とにかく徹底してやる気概が重要です。そこから、横に広げるのです。
私は、近所にある「セカンド・ストリート」(古着や中古品などの買取と販売を手掛ける量販店)によく通っているんですが、そこ で見かけた中古のギターが気になり始めているんです(笑)。さすがにエレキには手を出せないので、クラシックギター。チェロも弾くから、ナイロン弦のクラシックギターならなんとかなるんではないかと。
いったいそれが何の役に立つのか?などと考える必要はありません。すぐに役立つことなんか考えてはだめ。追究したことを他者と共有することで、出会いも生まれ、強い自信につながります。なんか、大学の話じゃなくなってしまいましたね。