『ハンナ・アレントの教育理論 「保守」と「革命」をめぐって』樋口大夢 著 (勁草書房)
『ハンナ・アレントの教育理論 「保守」と「革命」をめぐって』樋口大夢 著 (勁草書房)
アレントの政治理論はいかに教育理論として再解釈できるのか。アレントの教育理論とそれから導かれる「政治」教育の構想を検討する。
■本の内容
アレントは、政治学や哲学の領域で研究されてきた「主権」概念を批判的に検討し、それに依拠しない形で自らの「政治理論」を構成した。アレントの政治理論はいかに教育理論として再解釈できるのか。アレントの教育理論とそれから導かれる「政治」教育の構想を検討する。政治教育の充実という今日的状況に対する応答ともなる一冊。
【著者】
樋口 大夢(ひぐち ひろむ)
1994年生まれ。東京大学大学院教育学研究科博士後期課程修了。博士(教育学)。現在:東洋学園大学グローバル・コミュニケーション学部専任講師。主著・ 主論文:「反出生主義をめぐる今日的状況に対して教育(学)は何ができるのか」『教育学研究』第90巻第2号(2023年)。「ハンナ・アレントにおける「自発性」の教育思想―「世界」を刷新することと教育が「保守的」であることの間」『教育学研究』第89巻第1号(2022年)。
【目次】
はしがき
凡例
序 章 「政治理論家」ハンナ・アレントと教育
第一節 問題の所在と本書の目的――「政治」を通して教育をみるとは
第二節 先行研究の状況と本書の課題
第三節 研究の方法――「政治理論家」の思考を教育理論として読み解くために
第四節 本書の構成
第一章 出生をめぐる議論をつなぐアレント――「教育理論家」として理解するための準備
第一節 反出生主義が教育にもたらした問い
第二節 あらゆる教育(学)は害悪なのか
第三節 死や自殺は(つねに)望ましいのか
第四節 生が良いのか悪いのか分からない中で生きる
第五節 教育(学)が有する両義性を自覚する
第六節 反出生主義に応答しうる教育(学)――出生をめぐるアレントの議論を導入する
第七節 生まれることの「良さ」を前提としない新たな教育を思考するアレント
第二章 「世界」を刷新することと教育が「保守的」であること――「自発性」に着目して
第一節 アレントの根底にあるもの
第二節 アレントにおける「自発性」――『全体主義の起原』初版以来の記述から
第三節 「自発性」と「政治」の連関――「評議会」の生起に着目して
第四節 「政治」における「あいだ」――「行為」と「制作」の連関から
第五節 アレント教育論における「保守的」な側面と「世界」を刷新することの間
第六節 近代教育批判後の「自発性」を考える
第三章 教育における「保守」と「革命」
第一節 「革命」を「保守」のもとに取り戻すアレント
第二節 アレント教育論における「保守的」な側面の独自性
第三節 「革命」に関する議論との関わりで考える「保守」
第四節 「アメリカ革命」とフランス革命を分かつもの
第五節 「新しく革命的なもの」を「保守」する教育
第六節 近代教育とは異なる教育の「保守主義」
第四章 「行為」における「非主権性」――主権者教育から「政治」教育の方へ
第一節 「主権」を批判するアレント
第二節 アレントにおける「主権」批判の前日譚――カール・シュミットの「主権」論を手がかりに
第三節 「行為」がもたらす新しい「始まり」――「非主権的」な性格に着目して
第四節 「行為」における「非主権性」の礎――人間が生まれることに着目して
第五節 「行為」における「非主権性」に基づく子どもと政治の関係性――〈子どもの政治〉の方へ
第六節 「非主権性」に基づく「政治」教育の構想に向けて
第五章 アレント教育論から考える教師――「政治」教育の担い手として
第一節 アレントが見据える「教師の資格」と「教師の権威」
第二節 教え子からみた教師アレント――二人の弟子の間の往復書簡に着目して
第三節 「世界」を知ることとそれを他人に伝えること――「教師の資格」について考える
第四節 「世界」への責任を引き受ける――「教師の権威」について考える
第五節 「政治」教育を担う教師について考える
補 章 アレント「政治」的道徳論から考える「思考」と「行為」のつながり――道徳教育における「政治」教育の可能性を探る
第一節 「思考」と「行為」の観点から道徳を考える
第二節 「誰でもない人」と「誰であるか」を開示する人
第三節 「悪」をなすことから離れる「思考」
第四節 一人で「思考」し複数人で「行為」する存在――アレントの議論を「政治」的道徳論としてみる
第五節 「思考」と「行為」の機会を確保する教育
第六節 「政治」的道徳論と「保守的」な教育論の間――アレントとともに考える道徳教育
終 章 「教育理論家」ハンナ・アレントとともに「政治」教育を思考する
第一節 本書の総括と各章の概略
第二節 本書の意義と残された課題
あとがき
参考文献
事項索引
人名索引
定価 5,170円(税込)
刊行日 2025/1月