KEI BOOK CLUB

高等教育関連の新刊書を中心に、さまざまなジャンルの書籍を紹介するコーナー

『20代からの文章読解 人文的思考を鍛える「読み方」10講』 山野弘樹 著(大和書房刊)

文章を読むとはどういうことか。考えさせない時代に抗して、人文学的思考を深めるために必須の読解の技術を気鋭の哲学者が徹底解説!

■本の内容

「読む」ことに慣れないまま、ポイントだけつまみ食い。
ファストに、従属的に受信する快楽に身を任せてしまう。
…考えさせない時代に抗して、「批判的読解」をいかに取り戻すか?
注目の若き俊英が、深く精緻に書き尽くした本格的クリティカル・リーディング入門!

千葉雅也氏、推薦!
「誠実に読む。いま、時代に必要なのは、言葉に対して時間をとって向き合うことだと思う。本書は、いわば「誠実な読解力」のための優れたガイドである。」

・解釈とは、自ら問いを発することによって、主体的に文脈を整理・形成する作業
・筆者の主張を成り立たせる論理構造(A=B=C=D、ゆえにA=D)をクリアに取り出す
・筆者が提示する議論の根拠を問うことで、筆者の議論の「強み」と「弱み」を見定める
・筆者の視点(その本が提示している枠組み)に忠実に沿って、その本の内容を整理する
・「XをAとして見る」という認識に自動的に組み込まれた「としての構造」を疑う
・「人文学的思考」とは、人間の精神や世界の在り方の「可能性」を取り戻すための思考
対象を「読む」ことで得られたものから、自分の手で新しく問いを設定する。そこから生まれた思考で、世界に存在する視点を増やす――この時代に求められている、新しい「読む」力。


■著者 山野弘樹(やまの ひろき):
千葉工業大学工学部教育センター非常勤講師。博士(東京大学)。2017年上智大学文学部史学科卒。2019年東京大学大学院総合文化研究科超域文化科学専攻修士課程修了。2025年同博士課程修了。専門は現代フランス哲学(とりわけポール・リクールの思想)。近著に『独学の思考法』(講談社現代新書)、『VTuberの哲学』(春秋社)、『対話の思考法 相手とぶつからないコミュニケーション』(角川新書)など。


目次

はじめに
今なぜ読解を学ぶのか
「読む」ことが非日常のことになっている
学問にかかわるすべての文章を読む力
人文学的思考の実践へ
本書の構成

基礎編

第1章 「読める」とはどういうことか
読解とは何かを定義する
「文章を読む」という行為の複雑さ
自分で問いを立てる

第2章 意味を解釈するということ
「意味」についての哲学的探究
「解釈する」行為の内実
「問い」は主体的・能動的に問われるもの
意味は「問いに答える営み」によって変わる
「問い」なくして「解釈」はありえない

第3章 論理構造を読み取るということ
A=B、B=C、ゆえにA=C
根拠判断となる箇所を見つけ出す
論理構造の妥当性を吟味する
長いパラグラフを精読する

実践編

第4章 テクストに対していかに問うのか(1)
「問うこと」は4つに分けられる
「具体を問う」とは何をすることか
信じているとはどういうことか
「何を指しているのか」につまずく原因
「何が省略されているのか」を考える

第5章 テクストに対していかに問うのか(2)
「根拠を問う」とは何をすることか
筆者の主張を批判的に吟味する
「おや?」と思うことが理解を厚くする
チャリタブル・リーディング

第6章 テクストに対していかに問うのか(3)
「要約を問う」とは何をすることか
要約の核を作成する
要約の核に肉付けする

第7章 テクストに対していかに問うのか(4)
「本質を問う」とは何をすることか
主体的に読むために必要なこと
本質を探究する思索(1)「約束」とは何をすることか
本質を探究する思索(2)「許す」とは何をすることか

結論

発展編

第8章 抵抗としての読解
「世界の意味」とは何か
XをAとして認識する
現代の〝病理”
〈可能性の貧困化〉に抗する

第9章 考えさせない時代に抗して
世界の意味を再解釈する
認識を問い直す演習(1)世界の再解釈
認識を問い直す演習(2)他者の再解釈
認識を問い直す演習(3)自己の再解釈

第10章 世界の意味を取り戻すということ
批判し、ゆっくり考える
批判的読解力を養うステップ(1)「XをAではなくBとして見る」という再解釈を試みる
批判的読解力を養うステップ(2)意味づけが誰によって決定されているのかを問う
批判的読解力を養うステップ(3)意味づけがいかに歴史的に生成してきたのかを問う
批判的読解力を養うステップ(4)意味づけがいかにして正当化されるのかを問う

抜粋
私たちは普段、何かを「解釈している」というより、むしろ「解釈させられている」状態にあります。こうした意味で、私たちの認識は非常に「従属的」なものです。そして、こうした状態に抵抗を示すためにこそ、「批判的読解力」――すなわち、「意味のネットワーク」に規定されてしまっている日常の認識を問い直し、世界の意味を別様に解釈するための力――が求められるのです。(「はじめに」より)


定価 1,760円(税込)
刊行日 2025年8月20日

大和書房へのリンク

Amazonへのリンク


関連記事一覧