
『ライティング教育の可能性 アカデミックとパーソナルを架橋する』松下佳代・川地亜弥子・森本和寿・石田智敬 編著(勁草書房刊)
『ライティング教育の可能性 アカデミックとパーソナルを架橋する』松下佳代・川地亜弥子・森本和寿・石田智敬 編著(勁草書房刊)
ライティング(書くこと)を教え、学ぶことについて、人間にとっての意味から考える。
■本の内容
アカデミック・ライティングの意義や評価に関する議論を含みつつも、「ライティング教育=アカデミックな文章の技術指導」という狭い見方に限定されず、人間形成全体におけるライティング教育の可能性を探る。そのため、パーソナル・ライティングというもう一つの軸を立て、アカデミックとパーソナルの両側面を架橋することを目指す。
■編著者:
松下 佳代(まつした かよ)
京都大学大学院教育学研究科教授、博士(教育学, 京都大学)。1960年生まれ。京都大学大学院教育学研究科博士後期課程学修認定退学。専門は、教育方法学、大学教育学。とくに、能力、学習、評価をテーマに研究と実践支援を行っている。主な著作に、『パフォーマンス評価』(日本標準, 2007)、『〈新しい能力〉は教育を変えるか─学力・リテラシー・コンピテンシー─』(ミネルヴァ書房, 2010)[編著]、『ディープ・アクティブラーニング─大学授業を深化させるために─』(勁草書房, 2015)[編著]、Deep active learning: Toward greater depth in university education(Springer, 2017)[編著]、『対話型論証による学びのデザイン─学校で身につけてほしいたった一つのこと─』(勁草書房, 2021)、『ミネルバ大学を解剖する』(東信堂, 2024)[編著]、『測りすぎの時代の学習評価論』(勁草書房, 2025)など。
川地 亜弥子(かわじ あやこ)
神戸大学大学院人間発達環境学研究科教授、博士(教育学, 京都大学)。1974年生まれ。京都大学大学院教育学研究科博士後期課程修了。専門は、教育方法学。とくに、日本の生活綴方・作文教育を中心に、研究・実践支援を行っている。主な著作に、『子どもとつくるわくわく実践─ねがいひろがる教育・保育・療育─』(全障研出版部, 2022)、『時代を拓いた教師たちIII─実践記録で紡ぐ戦前教育実践への扉─』(日本標準, 2023)[共編著]、『戦後日本教育方法論史 上─カリキュラムと授業をめぐる理論的系譜─』(ミネルヴァ書房, 2017)[共著]、「戦前生活綴方における教育評価論の構造─1930年代の『集団的合評作業]の分析を中心に─」『教育方法学研究』(30巻, 2005, 1-12)[日本教育方法学会研究奨励賞受賞論文]など。
森本 和寿(もりもと かずひさ)
大阪教育大学教育総合系准教授、博士(教育学, 京都大学)。1987年生まれ。京都大学大学院教育学研究科博士後期課程修了。専門は、教育方法学。とくに、米国のライティング教育、日本の作文・綴方教育について、書くことを通じた人間形成という観点から研究を行っている。主な著作に、「米国大学初年次における表現主義に基づくライティング教育─ピーター・エルボウの理論と教科書の分析─」『教育方法学研究』(45巻, 2020, 37-47)[日本教育方法学会研究奨励賞受賞論文]、「友納友次郎の綴方教授論における『描写』と『自己信頼』─随意選題論争を手がかりとして─」『関西教育学会研究紀要』(17巻, 2017, 1-16)[関西教育学会学会賞受賞論文]など。
石田 智敬(いしだ ともひろ)
愛知県立芸術大学音楽学部准教授、博士(教育学, 京都大学)。1993年生まれ。京都大学大学院教育学研究科博士後期課程修了。専門は、教育方法学。とくに、教育評価、学習評価をテーマに理論的・実践的研究を進めている。主な著作に、「スタンダード準拠評価論の成立と新たな展開─ロイス・サドラーの所論に焦点を合わせて─」『カリキュラム研究』(30巻, 2021, 11-28)[日本カリキュラム学会研究奨励賞受賞論文]、「ロイス・サドラーによる形成的アセスメント論の検討─学習者の鑑識眼を錬磨する─」『教育方法学研究』(46巻, 2021, 1-12)[日本教育方法学会研究奨励賞受賞論文]など。
【目次】
まえがき
第Ⅰ部 ライティング教育の俯瞰図
第1章 ライティング教育序説──アカデミックとパーソナルという枠組み
はじめに
1.アカデミック・ライティングの起源を探る
2.書くことにおける個人なものの台頭──自己という近代的源泉
おわりに
第Ⅱ部 アカデミック・ライティング
第2章 米国におけるアカデミック・ライティング教育──現代伝統修辞学における形式的完成の追求
はじめに
1.アカデミック・ライティングにおける「論理」の複数性
2.米国型エッセイの構造
3.現代伝統主義というパラダイム
おわりに
第3章 フランスにおけるディセルタシオンと言語資本──書くこと、話すこと
はじめに
1.ディセルタシオンとは何か
2.ディセルタシオンと口頭コミュニケーション
おわりに
コラム1 中国における読むことと書くことをつなぐ教育方法──読書筆記
第4章 ライティングの評価はどうあるべきか──ルーブリック論争を調停する
はじめに
1.ライティングの評価論が応えるべき問い
2.ルーブリック
3.ルーブリック批判とその論点──ルーブリック論争の到達点
4.これからのライティング評価論──ポスト・ルーブリックの地平
おわりに
コラム2 アカデミック・ライティングとパーソナル・ライティングの評価──創成原理と規範原理
第5章 ルーブリックを飼いならす──論証の評価、論証としての評価
はじめに
1.ルーブリックというツール
2.現状のルーブリックの問題点
3.ルーブリックを解きほぐす
4.論証の評価、論証としての評価
おわりに──どうルーブリックを飼いならすか
座談会1 「書ける」を問う──書くことを教える現場から
第Ⅲ部 パーソナル・ライティング
第6章 米国におけるパーソナル・ライティング教育──「自己表現」という厄介者と付き合う
はじめに
1.米国における「表現」の歴史
2.表現主義の実践例
おわりに
第7章 フランスの大学における「日誌(Journal de bord)」の実践──社会・文化的格差を意識した初年次教育
はじめに
1.フランスの大学教育
2. 「大学生になる」こと──パリ第8大学における「書くこと」を通した初年次教育実践の系譜
3.スティグマを取り除く──「自己の社会学的分析」実践
4.二つの実践の特徴と日本への示唆
コラム3 経験や記憶をライフストーリーによって再構築する──カナダ・ケベック大学の人生を創造する授業から
第8章 日本の大学におけるパーソナル・ライティング教育の現代的な意義
はじめに
1.日本と米国の大学における文章表現教育の変遷
2.学生発達論のパラダイムシフト
3.認識の起点としての〈私〉
4.学びの起点としての〈私〉
5.パーソナル・ライティングの理念と実践
6.文章記述の生成プロセス
7.作品と批評
8.パーソナル・ライティングの教育的効果
おわりに
コラム4 作家が書くことを教えるということ
第9章 生活綴方における書くことの教育──書くこと・読むこと・話すことを通じた人間形成
はじめに
1.認識・表現・生き方の姿勢──意欲と個のリアリティへの注目
2.調べる綴方と意欲
3.表現技術と生活の批評──生活詩における意欲
4.教育としての批評と指導を求めて
5.戦後の生活綴方の史的展開と現代の論点
おわりに
座談会2 書くことを通じた人間形成とは
第Ⅳ部 教師教育におけるライティング
第10章 教師教育における書くことの指導と評価──ケース・メソッドの理論と実践
はじめに
1.ケース・メソッドの枠組み
2.教師教育における書くことの指導
3.教師教育における書くことの評価
おわりに──ケース・メソッドのゆくえ
第11章 書くことで教師を育てる──福井大学の教員養成カリキュラムを事例に
はじめに
1.福井大学の教員養成カリキュラム
2.書くことを支えるコミュニティ・文化の醸成
おわりに
コラム5 スペイン・カタルーニャ地方における書くことの教育と教師教育
あとがき
人名索引
事項索引
定価 3,300円(税込)
刊行日 2025年4月14日