
『大正教養主義の成立と末路 近代日本の教養幻想』松井健人 著(晃洋書房刊)
『大正教養主義の成立と末路 近代日本の教養幻想』松井健人 著(晃洋書房刊)
教養死すべし。原典読解、新資料発掘を重ね、研究はこの結論に辿りつく。教養主義研究の新展開。
■本の内容
教養を積んで差別を行う――
日本の教養はどう始まったのか。
原典を読解、新史料を発見し、大正教養主義の成立からその末路までを解明。
教養主義のリハビリテーション不可能なありさまを描きだした、
教養主義の死亡診断書。
■著者 松井 健人(まつい けんと):
1992年和歌山県和歌山市生まれ.。2020年東京大学大学院教育学研究科博士課程修了、博士(教育学)。日本学術振興会特別研究員PD等を経て現在、東洋大学文学部日本文学文化学科助教(有期)。著書に『教養・読書・図書館――ヴァイマル・ナチス期ドイツの教養理念と民衆図書館』(晃洋書房、2023年)。『思想史講義【大正篇】』(山口輝臣・福家崇洋編、共著、筑摩書房、2022年)
目次
序 章 大正教養主義という原像
0-1 問題の所在と本書の構成
0-2 補 足──「教養主義」をめぐる研究文脈
第Ⅰ部 大正教養主義の生成
第1章 大正教養主義の起源──ラファエル・フォン・ケーベルの教養論
1-1 はじめに
1-2 大正教養主義におけるケーベルの立ち位置
1-3 ケーベルの教養論
1-4 ケーベル教養論の内実とその歴史的性格
1-5 おわりに
第2章 教養の閉鎖領域──ケーベルと学生たち
2-1 問題の所在──大正教養主義の原像、あるいは大正教養主義記述の定型をめぐって
2-2 東京帝国大学におけるケーベルと教養
2-3 ケーベル受容からみる「教養」の展開
2-4 大正教養主義の原/幻像をめぐって
第3章 暗記・暗記・暗記──旧制第一高等学校のドイツ語教育
3-1 問題の所在──旧制高等学校とドイツ語
3-2 旧制第一高等学校におけるドイツ語教育課程と教授法
3-3 旧制第一高等学校のドイツ語教育の実際
3-4 おわりに
補 章 「教養」(Bildung)の語史──明治~昭和前期の独和・和独辞典の検討
補-1 はじめに
補-2 明治期から昭和前期の独和辞典における「Bildung」・「Erziehung」・「Kultur」
補-3 明治期から昭和前期における和独辞典の「教育」・「教養」・「文化」
補-4 おわりに
第Ⅱ部 大正教養主義の成立
第4章 働きたくない──教養小説『三太郎の日記』における読書の意義
4-1 はじめに
4-2 『三太郎の日記』における読書を巡って
4-3 『三太郎の日記』における読書の意義
4-4 相克する「社会」と「読書」
4-5 おわりに
第5章 人格と怨念──大正3 年・『三太郎の日記』発売と同時代書評
5-1 はじめに
5-2 『三太郎の日記』を巡る研究動向
5-3 書評にみる『三太郎の日記』受容
5-4 生成する神話──〈人格主義的コード〉前哨戦
5-5 おわりに
第6章 読書をかさねて差別する──阿部次郎の読書論と教養論
6-1 はじめに
6-2 阿部次郎の教養論と読書論
6-3 読書と生活のかかわり
6-4 教養と愛のかかわり
6-5 阿部次郎教養論のネタ元としてのゲーテ
6-6 読書と愛とは、植民地支配である──『三太郎の日記』以後の阿部次郎
第Ⅲ部 大正教養主義の末路
第7章 教養の戦争協力──旧制第一高等学校長期の安倍能成における教養・教育論
7-1 問題の所在――大正教養主義と安倍能成
7-2 旧制第一高等学校長期の安倍能成の著作の分析
7-3 おわりに
第8章 教養を忘れて──戦後日本における安倍能成の教育論
8-1 はじめに
8-2 安倍能成の位置づけ
8-3 安倍能成の自由観
8-4 安倍能成の教育論──個人の自由と民主主義
8-5 民主的かつ愛国的──あるいは論者としての安倍能成の位置
第9章 大正教養主義の末路──阿部次郎の戦中戦後
9-1 はじめに
9-2 西洋古典の読書から日本文化回帰へ──戦中期の阿部次郎
9-3 戦後期の阿部次郎の言論活動
9-4 おわりに
終 章 大正教養主義という幻像
終-1 本書の内容のまとめ
終-2 教養主義研究のイデオロギー
終-3 大正教養主義の末路と今後
定価 2,970円(税込)
刊行日 2025年8月1日