KEI BOOK CLUB

高等教育関連の新刊書を中心に、さまざまなジャンルの書籍を紹介するコーナー

『令和時代の高等教育(上)~変化する高等教育システム』山本眞一 著(ジアース教育新社刊)

■本の内容

平成に入って本格化した大学改革は、その勢いを増しつつ令和の時代に突入した。この間大学の自主自律は、経済構造の変化や大学に対する社会の要求の強まり、さらには政府の政策変容の中で、常に脅かされてきた。しかし、大学は社会の支持なくして成り立ちえないのもまた真実である。この両者をどうバランスさせ、大学そして高等教育システムを維持発展させるべきか--。この課せられた試練に向き合い、変化する大学の姿をさまざまな角度から追いかける。2019年4月から2024年3月まで『文部科学教育通信』で連載した記事をテーマ別に編集して収録。高等教育政策に携わる実務家、研究者は必読のみならず、これからの日本の教育全般に関心のある人の最初の一冊としても最適。


■著者 山本眞一(やまもと しんいち)

1972年東京大学法学部卒業後、文部省入省、1979年筑波大学経営・政策科学研究科修了、経済学修士。1996年論文により教育学博士。筑波大学教授、広島大学教授、桜美林大学教授を歴任。2007年より2年間日本高等教育学会会長をつとめる。


【目次】

まえがき

第1章 18歳人口の将来と高等教育
1―1 出生率の連続低下~高等教育未来像の再考
1―2 18歳人口と大学~厳しい長期見通しを踏まえつつ
1―3 18歳人口減少と高等教育~3分の2規模への対処
1―4 18歳人口減少にどう備えるか~厚労省新発表を受けて
1―5 高等教育機会の地域差~学校基本調査速報値から
1―6 18歳人口の変化への対応~長期的視野の必要性

第2章 変わりゆく大学入試
2―1 高大接続の現実~勉強しない生徒・受入れざるを得ない大学
2―2 大学入試改革の経緯に思う~時代の変化の中で
2―3 大学入試の役割と変化~実施要項を見て思うこと
2―4 高等教育と大学入試改革~「受験の世紀」の変容から20年を経て
2―5 入試と大学~学歴・実力の分離論から一体化論へ
2―6 大学入試環境の変化が示唆するもの~その論点は何か
2―7 「年内入試」の功罪~学力担保はどうなるか

第3章 学歴偏重批判の過去と将来
3―1 学歴社会批判の行方~大学と社会との関係変化の中で
3―2 学費と大学教育の効用~内部収益率比較から考える
3―3 学費と大学教育の効用~大学院の場合
3―4 低学歴国ニッポン~博士人材をどう考えるか
3―5 学歴偏重批判の過去と将来~学年の始めに考える

第4章 職業教育と大学
4―1 高等教育の多様化~ユニバーサル時代の大学とは
4―2 大学教育とは何か~機能の拡大と変化の中で
4―3 役に立つ大学教育とは何か~会計ソフト云々の激論を振返る
4―4 大学の教育機能再考~役に立つとはどういうことか
4―5 職業別就職者数の変化と大学教育のこれから~30年前との比較
4―6 卒業者数と進路選択に見る30年間の変化~学校基本調査の分析から
4―7 「役に立つ教育]を巡る若干の論点~人文学と人文科学
4―8 大学の役割の今後~専門・職業教育をどう生かすか

第5章 デジタル社会と大学
5―1 デジタル社会と高等教育~メキシコ国際会議に出て
5―2 遠隔授業と大学~コロナウイルス問題を契機に
5―3 アフター・コロナの高等教育~ネット授業拡大を前提として
5―4 遠隔授業システムがもたらすもの~コロナ禍の大学の現状から
5―5 学年の始めに考える~withコロナと高等教育のデジタル化
5―6 ネット(Zoom)による学会大会~私的経験と感想から
5―7 オンライン大学教育の新たな可能性~大学基準協会調査等から
5―8 Web会議の効用と課題~大学関係者に与える影響

第6章 学問分野それぞれの事情
6―1 文系教育の課題~その在り方についての論点
6―2 学生数分布の変化をどう読むか~続く実学志向の傾向
6―3 大学の資金分布の傾向~違いから読み取れるもの
6―4 分野の専門性と就職~学校基本調査のデータから考える
6―5 文系大学院教育改革の方向性~中教審とりまとめ案を読んで
6―6 医学部合格者分布に見る我が国の高等教育~その課題とは?

第7章 大学の研究機能
7―1 大学の研究機能~受容から発信への進化
7―2 研究活動の実態~分野による優先資源や研究費の違い
7―3 科学技術・イノベーションと大学~大学の役割はいかに
7―4 研究大学について考える~科研費配分の分布から
7―5 理系人材の増強~この奥深い課題をどう考えるか
7―6 大学ファンド~その効果と影響をどう見るか

第8章 大学院を考える
8―1 大学院~その役割を高めるには
8―2 大学院政策の課題~発展・充実のために為すべきこと
8―3 大学院への入学状況と質確保~私学事業団調査その他の調査から
8―4 私の大学院経験~これからの高等教育を語るために
8―5 もう一つの入学~大学院入学者の属性から
8―6 大学院の成長と課題~社会の発展に重要な人材養成として
8―7 人社系大学院問題を考える視点~中教審審議まとめを読んで

第9章 高等教育をより良く知るために
9―1 冬休みの読書~どこへ行くのか大学改革
9―2 大学名の英文表記~何を世界に伝えるか
9―3 冬休みの読書~コロナ禍にあって
9―4 高等教育論が「わかる」ために~入門テキストを読んで
9ー5 冬休みの読書~大学問題の捉え方
9―6 春休みの読書~混迷・凋落の高等教育を救うために
9―7 冬休みの読書~大学のこれからを深く考えるために


定価 3,520円(税込)
刊行日 2025年1月5日

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